デザインツール初級でも成果を魅せるポートフォリオ術:カンプ・プロトタイプの活用法
はじめに:デザインツールの成果物をポートフォリオに加える重要性
未経験からWeb業界やIT分野へのキャリアチェンジを目指す際、技術スキルだけでなく、企画力やデザイン思考、そしてそれを形にするツールスキルを示すことが重要視されています。HTML、CSS、JavaScriptの基礎スキルに加え、デザインツール(Figma、Sketch、Adobe XDなど)の初級スキルをお持ちであれば、そこで作成した成果物をポートフォリオに含めることで、多角的な能力をアピールすることが可能です。
デザインツールの成果物、特にWebサイトやアプリケーションの「カンプ」(完成イメージ図)や「プロトタイプ」(操作感を試せる試作品)は、単にデザインのスキルを示すだけでなく、以下のような重要な能力を伝える手段となります。
- 視覚的なコミュニケーション能力: アイデアや仕様を具体的に視覚化する能力。
- デザイン思考・UI/UXへの配慮: ユーザーにとって使いやすい、目的を達成できるデザインを考えるプロセス。
- ツールスキル: 業界標準のデザインツールを使いこなせる基礎力。
- 技術実装との関連性: 作成したカンプやプロトタイプを、HTML/CSS/JavaScriptでどのように実装するかをイメージできる能力。
この記事では、デザインツール初級レベルの方でも、作成したカンプやプロトタイプをポートフォリオで効果的に「成果」として見せるための具体的な方法について解説します。
ポートフォリオで何を見せるか:カンプ・プロトタイプ活用の基本
デザインツールで作成できる成果物は多岐にわたりますが、ポートフォリオにおいて特に効果的なのは、Webサイトやアプリケーションの具体的な完成イメージを示すカンプや、操作の流れを示すプロトタイプです。これらは、単に技術的なコーディングスキルだけでなく、その前段階にある企画やデザインのプロセスに関与できる可能性を示すからです。
成果物を見せる際の基本は、「どのような目的で、誰のために、何を考え、どのように形にしたか」を明確にすることです。単に成果物の画像を掲載するだけでなく、その背景にある思考プロセスや工夫点を解説することが、あなたの能力をより深く理解してもらう鍵となります。
成果物の具体的な掲載方法と解説のポイント
ポートフォリオにカンプやプロトタイプを掲載する際には、以下の点を考慮すると効果的です。
1. 静止画(カンプ)の効果的な見せ方
完成イメージであるカンプは、デザインの質やレイアウトの構成力を示すために重要です。
- 主要な画面の提示: トップページ、一覧ページ、詳細ページなど、プロジェクトの主要な画面カンプを複数提示します。
- デバイス対応の提示: スマートフォン、タブレット、PCなど、異なるデバイスでの表示イメージを並べて示すことで、レスポンシブデザインへの理解や対応力をアピールできます。
- デザイン詳細部分のクローズアップ: ヘッダー、フッター、ナビゲーション、ボタン、フォーム要素など、特にデザインで工夫した点や、技術的な実装を考慮してデザインした部分を拡大して見せると、こだわりやスキルが伝わりやすくなります。
- 画像だけではない解説: 各カンプの横や下に、そのデザインのコンセプト、レイアウトの意図、配色やタイポグラフィの選択理由、特定のUI要素をそのようにデザインした理由などを具体的に記述します。
2. インタラクティブな見せ方(プロトタイプ)の活用
デザインツールで作成したプロトタイプは、実際の操作感を伝える強力なツールです。
- プロトタイプの埋め込み: 多くのデザインツールには、作成したプロトタイプをWebサイトに埋め込む機能があります。これにより、採用担当者はポートフォリオ上で実際に操作感を体験できます。
- 操作デモ動画/GIF: プロトタイプの埋め込みが難しい場合や、特定の操作フローを強調したい場合は、画面録画した動画やGIFアニメーションとして掲載することも有効です。動画の場合は、重要な操作箇所で一時停止したり、テキストで補足説明を加えたりすると理解が深まります。
- 解説文での補足: プロトタイプで伝えたい操作の流れや、ユーザーがどのように情報にアクセスするかといった導線設計について、解説文で具体的に説明します。どのようなユーザー体験(UX)を目指したのかを明確に記述します。
3. 解説文で伝えるべき「思考のプロセス」
デザインツールの成果物を掲載する上で最も重要なのは、単なる完成物ではなく、そこに至るまでの「思考プロセス」を伝えることです。未経験者の場合、このプロセスを示すことが、問題解決能力や学習能力、ポテンシャルを示す強力な証拠となります。
- プロジェクトの背景と目的: なぜこのWebサイトやアプリケーションをデザインしようと思ったのか、どのような課題を解決しようとしたのかを明確に記述します。
- ターゲットユーザー: 誰がこの成果物を使うのか、そのユーザー像を具体的に設定し、そのユーザーのためにどのようなデザインを考えたのかを説明します。
- デザインコンセプトと意図: 全体のデザインコンセプトや、特定の要素(色、形、配置など)を選んだ意図を説明します。「なんとなく」ではなく、「なぜそうしたのか」という理由を論理的に説明できるようにします。
- UI/UXにおける工夫点: ユーザーの使いやすさ、情報の分かりやすさ、目的達成のための導線など、UI/UXの観点から工夫した点を具体的に記述します。例:「〇〇の情報をすぐに見つけられるように、△△の要素をヘッダーに固定配置した」「フォーム入力の手間を減らすため、入力補助機能をデザインに盛り込んだ」など。
- デザインツールをどのように活用したか: デザインシステムの構築、コンポーネント化、Auto Layoutの活用、共同編集機能など、デザインツールの具体的な機能をどのように活用して効率的に、あるいはより質の高いデザインを実現したかを述べると、ツールスキルへの理解度が伝わります。初級レベルであっても、「基本的なフレーム作成からコンポーネントの使い分けを学んだ」といった成長プロセスに言及することも有効です。
- 技術的な制約とデザインの調整: 自分でHTML/CSS/JavaScriptでの実装も行う場合、技術的な制約(例:特定のレイアウトがCSSで実現しにくい、JavaScriptでの複雑なアニメーションは難しいなど)を考慮してデザインを調整した経験があれば、その過程を説明することで、実装を見越したデザインができることを示せます。
- 苦労した点と解決策: デザインプロセスで直面した課題(例:情報の優先順位付け、複雑なコンテンツの整理、レスポンシブ対応でのレイアウト調整など)と、それをどのように考え、解決したかを具体的に記述します。これにより、問題解決能力と粘り強さをアピールできます。
初級レベルでも可能な「成果」の見せ方
デザインツール初級レベルであっても、十分に成果として見せられるプロジェクトは数多くあります。
- 既存サービスの模写・リデザイン: よく利用するWebサイトやアプリケーションの一部を模写したり、自分なりにUIを改善するリデザイン案を作成したりするプロジェクトは、デザインツールの基本操作習得と、既存デザインを分析する力を示すのに適しています。
- シンプルなランディングページ(LP)デザイン: 特定の製品やサービスを紹介するシンプルなLPデザインは、情報の整理と視覚的な訴求力を養うのに役立ちます。
- ブログやポートフォリオサイトのUIデザイン: 自身のブログやポートフォリオサイトのUI/UXをデザインツールで設計してみることは、実践的であり、自身のWebサイト制作スキルとの連携も見せられます。
- 課題解決型のシンプルなUIデザイン: 日常生活や学習の中で感じた「こうだったらいいのに」という小さな課題を解決するためのシンプルなアプリケーション画面UIをデザインしてみることも有効です。
これらのプロジェクトを通じて、デザインツールを使った「考えるプロセス」と「形にする力」を具体的に示しましょう。
採用担当者はデザインツールの成果物で何を見るか
採用担当者は、デザインツールの成果物から、単に「ツールが使えるか」だけでなく、以下の点を評価することがあります。
- デザイン思考: ユーザー視点で考えられているか、目的達成のための設計ができているか。
- 構成力・整理力: 情報を分かりやすく整理し、視覚的に構成する力があるか。
- コミュニケーション能力: 自分のデザインの意図や考えを論理的に説明できるか。
- 潜在的なUI/UXへの関心: デザインツールを使った経験から、UI/UXデザイン領域への関心や適性があるか。
- 技術実装への理解(あれば尚可): デザインが技術的に実現可能か、実装の手間を考慮できているか。
これらの点を意識して成果物を選定し、解説を加えることで、あなたのポテンシャルを効果的に伝えることができます。
まとめ:デザインツール成果物でポートフォリオを強化する
デザインツールの初級スキルで作成したカンプやプロトタイプは、あなたのポートフォリオをより豊かにし、技術スキルだけでは伝えきれない多角的な能力をアピールするための貴重な材料となります。
単なる完成イメージの提示に留まらず、「なぜそのデザインにしたのか」「ユーザーのために何を考えたのか」「ツールをどのように活用したのか」といった思考プロセスや工夫点を具体的に解説することで、あなたの学びの深さやポテンシャルを採用担当者に効果的に伝えることが可能です。
ぜひ、あなたのポートフォリオにデザインツールの成果物を加え、未経験からのキャリアチェンジを成功させるための強力な武器として活用してください。