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ポートフォリオで示す「誰のため」:目的とターゲットユーザーを明確にする解説術

Tags: ポートフォリオ, プロジェクト, 未経験, 解説, 目的・ターゲット

学習成果としてのプロジェクトをポートフォリオで紹介する際、単に機能や技術要素を羅列するだけでは、採用担当者にプロジェクトの真価やあなたの能力が伝わりにくい場合があります。特に実務経験が少ない未経験者にとって、プロジェクトを通じて何を考え、どのような目的を達成しようとしたのか、そして「誰のために」それを作ったのかを示すことは、あなたの可能性を効果的に伝える上で非常に重要です。

なぜプロジェクトの目的とターゲットユーザーを示すべきか

採用担当者は、ポートフォリオのプロジェクトを通じて、応募者の技術力だけでなく、問題解決能力、思考プロセス、ユーザー視点、そしてビジネスへの理解度などを評価しようとしています。

単に「HTML/CSS/JavaScriptを使ってこんな機能を作りました」という説明だけでは、技術的な習熟度は伝わるかもしれませんが、「なぜその機能が必要なのか」「その機能が誰にどのような価値を提供するのか」といった、より本質的な視点が欠けてしまいます。

プロジェクトの目的やターゲットユーザーを明確に設定し、それをポートフォリオでしっかりと示すことで、あなたは以下の点を効果的にアピールできます。

これらの能力は、実際の開発現場で非常に重視される資質です。

プロジェクトで「誰のため」「何のため」を具体的に示す方法

あなたのポートフォリオプロジェクトで、目的とターゲットユーザーを効果的に示すための具体的なステップと記述ポイントを解説します。

1. プロジェクトの背景と目的を明確にする

プロジェクトの冒頭で、なぜそのプロジェクトに取り組もうと思ったのか、解決したい課題は何だったのか、最終的にどのような状態を目指したのかを明確に記述します。

例: 「本プロジェクトは、『特定の情報を効率的に集約・管理したい』という課題を持つ〇〇世代のユーザー向けに開発しました。インターネット上に分散している情報を一箇所にまとめることで、情報収集にかかる時間と手間を削減することを目的としています。」

2. 具体的なターゲットユーザー像を設定する

「誰のため」をより具体的にするために、想定するユーザー層の特徴(年齢、性別、職業、ライフスタイル、技術リテラシーなど)や、彼らが現在抱えているであろう具体的な課題を記述します。

例: 「このアプリケーションのターゲットユーザーは、40代〜50代のビジネスパーソンで、特にWeb上で複数の情報ソース(ニュースサイト、ブログ、SNSなど)を日常的に参照する機会が多い方を想定しています。彼らは多忙であり、必要な情報を見つけるために複数のサイトを行き来することに煩わしさを感じていると想定しました。」

3. ターゲットユーザーの課題に対するソリューションを説明する

設定したターゲットユーザーの課題に対して、あなたのプロジェクトがどのように解決策を提供しているのかを具体的に説明します。プロジェクトの機能一つ一つが、どのようにユーザーの課題解決に繋がっているのかを紐づけて解説します。

例: 「ターゲットユーザーが複数のサイトを巡回する手間を省くため、RSSフィードやブックマークレットを活用して、関心のある情報を自動的または手動で一箇所に集約できる機能を実装しました。これにより、ユーザーは自身のポータルサイトを開くだけで、最新の関連情報をまとめて確認できるようになります。」

4. デザインやUI/UXの考慮点をターゲットユーザー視点で説明する

デザインやUI/UXについても、単に「モダンなデザインにした」というだけでなく、それがどのようにターゲットユーザーの利便性や体験向上に貢献しているかを具体的に説明します。ペルソナの技術リテラシーや利用シーンなどを考慮した工夫点があると、より説得力が増します。

例: 「ターゲットユーザー層が比較的高い年代であることを考慮し、文字サイズを大きく、ボタンの配置を分かりやすく、操作手順を極力少なく設計しました。また、通勤中などのモバイル利用も想定し、レスポンシブデザインを採用しています。これらのUI/UX設計は、ユーザーが迷わず直感的に情報にアクセスできるよう配慮したものです。」

5. プロジェクトの成果や評価について記述する

もし可能であれば、プロジェクトが目的をどの程度達成できたか、または自己評価としてどのような点が成果だと考えているかを記述します。ユーザーテストを行った経験があれば、その結果やユーザーからのフィードバックについても触れると、より実践的な視点を示せます。

例: 「開発した情報集約機能により、想定ユーザーの情報収集時間を約30%削減できる見込みです(自己評価に基づきます)。今後、可能であればベータ版を公開し、実際のユーザーからのフィードバックを得て改善を続けたいと考えています。」

未経験者の基礎レベルプロジェクトでの応用

「HTML/CSS/JavaScript基礎レベルで、そこまで複雑な機能は作れない」と感じるかもしれません。しかし、シンプルなプロジェクトでも、目的とターゲットユーザーを明確にすることで、ポートフォリオの価値を大きく高めることが可能です。

例: * シンプルな静的サイト: 特定の趣味を持つ層(例:近隣の散策好き)向けに、地元の隠れた名所を紹介する情報サイト。なぜそのターゲット層なのか、どのような情報が彼らに必要か、どうすれば情報を見つけやすいかを考慮した構成やデザインにした点を強調する。 * 簡単な計算ツール: 特定の職業(例:フリーランスのライター)が日常的に使うが、既存ツールにはない特定の計算(例:文字単価と総文字数から概算報酬を出す)ができるツール。その職業の人がなぜこのツールを必要とするのか、どのような使い方が想定されるかを解説する。 * ToDoリスト: 特定の状況(例:集中力が続かない人)に特化し、タスクを細かく分解して管理する機能や、短い時間での集中を促すタイマー機能などを備えたもの。なぜその状況の人がターゲットなのか、どのような工夫で課題解決を目指したかを説明する。

重要なのは、どれだけ高度な技術を使ったかではなく、「誰かの課題を解決するために、学んだ技術をどのように応用しようとしたか」という思考プロセスと目的意識を示すことです。

まとめ

ポートフォリオで学習成果としてのプロジェクトを見せる際、単なる機能紹介に留まらず、そのプロジェクトが「誰のため」に「何のため」に作られたのかを明確に伝えることは、未経験者が自身の価値をアピールする上で非常に効果的です。

プロジェクトの背景、目的、具体的なターゲットユーザー像、そしてそれらを考慮した上での開発における工夫点や判断基準を丁寧に解説することで、あなたの技術力だけでなく、問題解決能力、ユーザーへの共感、そして学ぶ姿勢を実践に活かせる力といった、採用担当者が求める多様な能力を示すことができます。

これからポートフォリオを作成する方、あるいは既存のポートフォリオを見直そうとしている方は、ぜひ自身のプロジェクトの「目的」と「ターゲットユーザー」を深掘りし、それをポートフォリオで効果的に見せるための記述を加えてみてください。