未経験でもアピールできる!ポートフォリオで示すデザイン思考と企画プロセスの見せ方
はじめに
ポートフォリオは、これまでの学習成果やスキルを示すだけでなく、採用担当者に対して自身の「考える力」や「問題解決へのアプローチ」を伝える重要なツールです。特に未経験から新しい分野を目指す場合、技術スキルや実務経験が限定的であるため、これらのポテンシャルを示すことが採用成功の鍵となります。
技術的なアウトプット(Webサイトやアプリケーション)そのものに加えて、その成果物がどのように生まれ、どのような意図や思考プロセスに基づいて構築されたのかを説明することで、ポートフォートの価値は飛躍的に向上します。ここでは、未経験者でもご自身の学習プロジェクトを通じて培ったデザイン思考や企画プロセスを、ポートフォリオで効果的に示す方法について解説します。
なぜ未経験者がデザイン思考や企画プロセスを見せるべきなのか
採用担当者は、未経験者に対して単なる技術の習得度だけでなく、新しい環境への適応力、自ら課題を見つけ解決する能力、ユーザーや顧客の視点を理解する姿勢などを評価します。これらはまさに、デザイン思考や企画プロセスを通じて養われる能力です。
デザイン思考は、ユーザーのニーズを深く理解することから始め、課題の定義、アイデア発想、プロトタイプ作成、テストといった段階を経て、革新的な解決策を生み出すための思考フレームワークです。企画プロセスは、どのような目的で、誰のために、どのような機能を持つものを作るのかを具体的に定める工程です。
これらのプロセスをポートフォリオで示すことは、以下の点をアピールすることに繋がります。
- 問題解決能力: どのような課題に対して、どのようなアプローチで解決を図ったのかを示せます。
- ユーザー中心の視点: 誰のためにその成果物を作ったのか、ユーザーの視点をどのように取り入れたのかを伝えられます。
- 論理的思考力と構造化能力: 企画から完成に至るまでの思考のステップを整理して示すことで、物事を論理的に考え、構造化する能力を示せます。
- コミュニケーション能力: 自身の思考やアイデアを言語化し、伝える能力を示せます。
未経験であっても、これらのプロセスを意識して学習プロジェクトに取り組むことで、技術スキルだけでは伝えきれない自身の強みを効果的に示すことが可能になります。
ポートフォリオでデザイン思考・企画プロセスを示す具体的な方法
学習プロジェクトをポートフォリオに掲載する際、最終的な成果物だけでなく、そこに至るまでの過程を丁寧に解説することが重要です。以下の要素をポートフォリオの各プロジェクト解説に盛り込むことを検討してください。
1. プロジェクトの背景と目的
何を作るか、という成果物の説明から入る前に、「なぜそれを作ろうと思ったのか」「どのような課題を解決したかったのか」といった背景から説明を始めます。
- 課題設定: 自身が感じた問題意識や、ターゲットユーザーが抱えるであろう課題について具体的に記述します。「〇〇という課題があり、それを解決するためにこのプロジェクトを始めました」のように明確に示します。
- 目的の明確化: そのプロジェクトで何を達成したかったのか(例:ユーザーが〇〇を簡単にできるようにする、情報伝達効率を改善するなど)を具体的に記述します。
この段階で、プロジェクトの「誰のため」「何のため」を明確にすることで、あなたの思考の出発点がユーザーや課題解決にあることを伝えられます。
2. ターゲットユーザーの定義と理解
どのような人を対象にしたプロジェクトであるかを明確にします。もし可能であれば、ペルソナを設定したり、簡単なユーザーシナリオを作成したりすることで、ユーザーへの深い理解を示すことができます。
- ターゲットユーザー像: 年齢、職業、利用シーンなど、具体的なユーザー像を記述します。
- ユーザーのニーズ・課題: ターゲットユーザーがその課題に対してどのようなニーズを持っているのか、どのような困りごとがあるのかを記述します。
デザインツール初級レベルであっても、簡単なテキスト記述や図解(ツールで作成したものでも手書きの写真を載せるのでも可)で示すことが可能です。
3. アイデア発想と解決策の検討プロセス
どのようにして最終的な成果物のアイデアに至ったのか、複数のアイデアをどのように比較検討したのかといったプロセスを説明します。
- 初期アイデア: 最初にどのようなアイデアを考えたのか、それがどのように発展していったのかを記述します。
- 検討過程: なぜその解決策を選んだのか、他の選択肢をなぜ採用しなかったのか、といった判断の根拠を記述します。
- ワイヤーフレームやラフデザイン: デザインツールで作成した簡単なワイヤーフレームや、手書きのラフスケッチを掲載することで、初期段階のアイデアや画面構成の検討プロセスを示すことができます。デザインツール初級レベルでも、大まかなレイアウトや要素配置を示すことは十分可能です。
思考のプロセスを「見える化」することが重要です。完璧なデザインである必要はありません。アイデア出しの段階で、様々な可能性を検討した形跡を示すことが価値となります。
4. プロトタイプ作成とテスト(簡易的なもの含む)
ユーザーに体験してもらうための簡易的なプロトタイプ作成や、身近な人に見てもらうといった簡単なテストを実施した場合、そのプロセスも記述します。
- 簡易プロトタイプ: HTML/CSS/JSで作成した画面遷移のモックアップや、デザインツールのプロトタイプ機能で作成した簡単な画面操作の流れなどを提示します。
- テスト実施とフィードバック: 身近な人やオンラインコミュニティなどで、作成したものを使ってもらった感想やフィードバックを得た場合、その内容と、それを受けてどのように改善を検討したかを記述します。
本格的なユーザーテストの実施は難しいかもしれませんが、ご自身で操作してみて気づいた改善点なども含め、利用者の視点を取り入れた検討を行ったことを示すことが重要です。
5. 実装段階での工夫と意図
最終的な成果物の実装において、どのような点を工夫したのか、その技術的な選択やデザイン判断にどのような意図があったのかを具体的に説明します。
- 技術選定の理由: 特定のHTML構造、CSS設計、JavaScriptの記述方法を選んだ理由などを、プロジェクトの目的やユーザーにとっての利便性と関連付けて説明します。
- デザイン上の配慮: 色の選定、フォント、レイアウトなど、デザインツールで作成した要素について、ユーザーの視認性や操作性を考慮した点を説明します。デザインツール初級レベルでも、なぜその色や配置にしたのか、どのような印象を与えたいと考えたのか、といった意図は十分に説明できます。
- こだわった点・苦労した点: 特に工夫した点や、実装が難しかった点を挙げ、それをどのように乗り越えたかを記述します。課題解決への粘り強さや学習意欲を示すことに繋がります。
単に「〇〇機能を作りました」だけでなく、「ユーザーが直感的に操作できるよう、〇〇というUIデザインを採用しました。そのためにCSSで△△の調整を行いました」「読み込み速度を考慮し、画像を適切に圧縮しました」のように、ユーザー視点やパフォーマンスを意識した具体的な判断プロセスを記述します。
6. 今後の展望と学び
プロジェクトを通じて得られた学びや、今後さらに改善したい点、どのように発展させていきたいかといった展望を記述します。
- プロジェクトからの学び: 技術的な学びだけでなく、企画やデザイン、問題解決プロセスにおける学びを記述します。
- 今後の改善点・展望: 時間やスキルが許せば、今後どのような機能を追加したいか、どのように改善していきたいかといった展望を具体的に記述します。
これは、あなたの学習意欲や成長ポテンシャルを示す重要な要素となります。
ポートフォリオサイトでの見せ方
これらの情報は、各プロジェクトの詳細ページに分かりやすく構成して掲載します。
- セクション分け: 「プロジェクト概要」「背景・目的」「ターゲットユーザー」「企画・デザインプロセス」「使用技術・実装の工夫」「学びと展望」のように小見出しをつけて、情報を整理します。
- 視覚的な要素の活用: ワイヤーフレーム、ラフスケッチ、簡単な図、スクリーンショットなどを効果的に配置し、視覚的に理解を助けます。デザインツール初級レベルで作成したものでも、思考プロセスを示すには十分役立ちます。
- 丁寧な文章: なぜそのように考え、行動したのかを、採用担当者が理解できるよう丁寧に記述します。専門用語の使用は避け、平易な言葉で説明することを心がけます。
まとめ
未経験者がポートフォリオで成果を魅せるためには、完成したアウトプットだけでなく、そこに至るまでの「デザイン思考」と「企画プロセス」を具体的に示すことが非常に有効です。プロジェクトの背景にある課題意識、ターゲットユーザーへの配慮、アイデアの発想と検討、実装における工夫とその意図、そしてそこから得られた学びを丁寧に言語化し、視覚的な要素と組み合わせてポートフォリオで示すことで、採用担当者はあなたのポテンシャルや問題解決能力、成長性をより深く理解することができます。
これらのプロセスを意識したポートフォリオ作成は、自身のスキルや経験を整理し、今後の学習やキャリアプランを明確にする上でも役立つでしょう。ぜひ、ご自身の学習プロジェクトを振り返り、その裏側にある思考プロセスをポートフォリオで積極的にアピールしてください。